本日ご来院された患者様…70代女性。
数年前に両脚の人工股関節の手術をされ、病院でのリハビリを経て、当院にご来院。
本日の主症状は『右下肢全体が重怠い…』
そして患者様から少しお話したいことがある、と言われました。
『手術を受ける前に医師から説明を受けて、私がイメージしたほど(体の状態が)良くなっていない。もちろん手術をする前に比べたら、痛みは軽くなっているし、アクアビクスも軽めのなら出来るようになった。でもまだ痛むし、脚も明らかに細くなって、少し歩くと疲れる。(病院では)出来る事から筋トレをして、筋肉をつけるように言われたけど、ジムでマシンを使ったり、トレーナーに聞きながらもっと負荷を増やさないとダメなのか。それとも少し良くなったから、もうこれ以上は回復を望んじゃいけないのか。』
ざっと、このような内容でした。
私もセラピストやトレーナーの仕事をし始めた時、筋トレの重要性を時に『貯筋』という言葉を用いて、『最後に自分を助けてくれるのは筋肉だから…』とよく患者さんに話してました。
ただ今は筋トレを勧める前に、重要視する一つに関節の【可動域】があります。
主訴または関連部位の関節の可動域が、適切な状態ではない場合、まずはそこの改善を第一に考え、その上での運動療法そして筋トレをアドバイスするようにしています。
それは制限がかかっている【可動域】が拡大する事で、筋出力も上がり、適切な筋トレが出来ると考えているからです。いわゆる機能改善につながります。
今回の患者様でいえば、『下肢の重だるさを感じる』との事。当然、手術した股関節を中心に原因を第一に考えますが、今回は膝関節が伸びていない事に注目しました。
前回のブログでも書きましたが、膝が伸びないと、股関節も伸びなくなり、さらに腰も伸びなくなります。
この患者様の場合、前回のブログの症例とは違って、太腿の裏側の内側(半腱様筋)に硬さがみられました。そこで硬い内側の筋肉を緩めて、弾力の回復・可動域の拡大を確認した上で、弱く感じられた太腿の前の内側の筋肉(内側広筋)をターゲットにした、徒手でのレッグエクステションを行いました。
もし膝の伸展が改善されないまま、通常のレッグエクステンションを行っても、硬い半腱様筋が制限因子となり、内側広筋への効果が完全には得られないと考えます。
患者さんに上記の事を説明しながら、運動療法を行ったところ、とても納得して下さいました。
筋トレ、運動療法への必要性は変わっていませんが、現在当院では、痛みの原因や可動域の確保を先ず第一に考え、治療やコンディショニングを行っております。
また、人間は望んでいた100%の内容が手に入ったとしても、場合によってはさらに120%の内容を求める生物です。
『とにかくこの激痛を何とかしたい』⇒手術によって激痛は緩和⇒『痛みは楽になったから、さらに動けるようになりたい』…とより多くのものを望むのは当然だと思います。
無理や無茶はできませんが、日常生活がさらに良いものとなるように、当院は患者さんそれぞれに合った、適切な治療を常に模索しながら行ってまいります。